「2021年度ギャンブル等依存症問題啓発週間によせて」
5月14日~20日は、国が定めるギャンブル等依存症啓発週間です。昨年より続く新型コロナウイルス(COVID-19)感染症のため、昨年に続きほとんどの啓発のイベントがオンラインなどWeb上のものとなっており、啓発週間の存在自体の影が薄くなってしまっています。
IR導入への流れのなかで、バタバタと作り上げられたギャンブル等依存症対策基本法(平成30年7月13日公布)において、「ギャンブル等」という新たな行政用語がつくられ、『法律の定めるところにより行われる公営競技、ぱちんこ屋に係る遊技その他の射幸行為』と定義されました。日本では、目に見えやすい施設型(ランドベース)ギャンブリングの代表といえばパチンコであり、法律の制定時の議論ではパチンコに関連する負の問題に焦点があたり、オンライン・ギャンブリングに関しての議論はほとんどなされないまま法律が動き出しました。世界のギャンブリング対策は、オンライン・ギャンブリングの広がりをどのように扱い、その負の影響をどのように抑えるかが、喫緊の課題として議論の中心となっています。特に、世界的な新型コロナウイルス感染症の蔓延は、カジノなどの施設型(ランドベース)ギャンブリングを直撃し、施設の一次的な休業、入場制限などで参加者が大幅に減少し、その一方で、ネットで参加できるオンライン・ギャンブリング(違法・合法を合わせ)への参加者や売り上げが、急激に増加しています。施設型からオンラインへの流れが、新型コロナウイルス感染症によって、一気に加速し、ギャンブリングのスタイルが世界的に激変しているようです。このギャンブリングのデジタル化の流れは、後戻りすることなく加速していくものと考えます。
合法的に日本で認められているオンライン・ギャンブリングは、公営競技と宝くじだけであり、公営競技は売り上げを伸ばし、宝くじのネット販売も順調に伸びています。オンライン・ギャンブリングについては、そのリスクはまだまだ未知の部分が多く、有効な対策についても世界の研究者が模索しているところです。広告の在り方から射幸性(明確に言うならば賭博性)まで、様々な項目と負の影響の関係の解明はこれからです。
オンライン・ギャンブリングの是非はともかく、最も行政が深くかかわっているギャンブリングでの規制緩和が、ギャンブル等依存症対策基本法の制定、実施と並行して行われており、対策については、世界に後れをとらない内容に早急に整備・充実されることが必要だと思っています。日本の既存ギャンブリングの対策もまた、世界からみて、胸を張れるものであって欲しいと思います。