Problem Gambling(プロブレム・ギャンブリング/問題ギャンブリング)

 

 日本では「ギャンブル」という言葉が一般的に使われていますが、「gamble(ギャンブル)」という用語が持つ意味は国や文化、法律、宗教、民族などによってかなり異なっています。日本では「賭博」という訳語が当てられていますが、賭博は法律用語では犯罪になってしまいます。このような意味や認識のずれを無くし、「人が賭け事をする行為」について皆が議論できるように、「人が何らの自分にとって価値があるものを失う危険を冒して偶然に賭ける行為」を総称して「gambling(ギャンブリング)」と呼称することが世界の標準となっています。

 ギャンブリングは、違法か合法か、金額が多いか少ないかは関係がありません。公営競技やパチンコ・パチスロだけではなく、宝くじやゲームコンテンツ内のガチャ、お金をかけた遊びなどは、分類上すべてギャンブリングに入ります。これらのギャンブリングを商業活動にした企業や運営者を総称してギャンブリング産業やゲーミング産業と呼ばれています。

 

 ギャンブリングの習慣によって学業や仕事、家計、人間関係、心身の健康状態などに問題が生じている状態を、「Problem Gambling(プロブレム・ギャンブリング/問題ギャンブリング)」と呼びます。

 また、その状態にある人を、「Problem Gambler(プロブレム・ギャンブラー/問題ギャンブラー)」と呼びます。問題の程度は、一人一人の生活条件によってもかなり異なり(大金持ちの人は、たくさん負けが続いても金銭問題にはなりにくい等)、問題の程度とギャンブリングへののめり込みの程度が必ずしも一致するわけではありません。問題ギャンブリングは、あまり深刻な問題に至ってはいないもののギャンブリングによって生活への支障や苦痛が生じている程度の状態から、本人だけでなく周囲の人や、社会に悪影響を与えているギャンブリング行動全般までを指す幅の広い概念です。世界中でギャンブリングに関連する研究や対策がこの20年余りで急速に進み、「Problem Gambling(問題ギャンブリング)」の範疇はより広く捉えられるようになってきています。

 

 2013年に医学的な診断基準であるDSM-5からアルコール・薬物の依存症(dependence)、ギャンブリングの“いわゆる依存症”レベルに相当する病的ギャンブリン(Pathological Gambling)がなくなり、ギャンブリングについてはGambling Disorder(ギャンブリング障害)という診断名が登場しました。

 

Problem Gambling(問題ギャンブリング)」の状態にあるからといって、医学的な診断基準である「Gambling Disorder(ギャンブリング障害)」に該当するとは限りません。

 ギャンブリング障害の中等度~重症レベルが、従来の病的ギャンブリングにほぼ相当します。問題ギャンブラーの中で中程度~重度ギャンブリング障害に相当する人たちは半数かそれ以下という諸外国の調査があります。日本の疫学調査(2017年発表)では、問題ギャンブラーの疑いのある人の推測値は70万人程度(パチンコ・パチスロのみにおける調査では、40万人程度)という結果が得られています。

 

 問題ギャンブラーの多くは、問題を自己修正し折り合いの付く状態に自然に(または、何らかのきっかっけで)収まっていくことがわかっています。しかし、一部の人たちは自己修正がうまくいかず、健康や生活に深刻な影響を生じながらも、ギャンブリングを継続する病的な状態となってしまう人たちもいます。重度のギャンブリング障害と呼ばれる人たちです。

 問題ギャンブラーにならないような予防と問題ギャンブラーから重度のギャンブリング障害に移行しないように予防する対策が、諸外国ではゲーミング産業も参加しながら取り組まれ、効果を上げています。